玄鳥去

「去」の本字は「厺」(U+53BA)。説文には「人相違也。从大𠙴聲。凡去之屬皆从去。丘據切」とあって、下は「厶」ではなく「𠙴」(U+20674)であるらしい。さらに「𠙴」は「𥬔」(U+25B14)と同じであるらしい。すなわち竹製の飯器。
漢和辞典で「去」を「器と蓋が離れた様を表す」という解釈を目にするが、これはどうもおかしい。上は明らかに「大」で、人の正面形であり、蓋ではない、と『甲骨文字小字典』にある。
白川説では下は「載書の器である〓」の壊れたものらしい。いちいちゲタにするのも鬱陶しいので、康熙字典で「口」の古文とする「𠙵」(U+20675)をこの際使ってみよう。「載書の器」=「𠙵」、その壊れたもの=「𠙴」という説だが、困ったことに甲骨文字では「去」は結構「大+𠙵」だったりする。
「夻」(U+593B)なんていう字もあるが、魚の名前だとかで、「去」とは関係がないといわれ、さらに「㚎」(U+368E)もあるが意味不明。もちろん「𠮷」(U+20BB7)は関係ない。
字画の簡単な字の方が衝突も多くて、字源を辿りにくい。なぜ飯器の形が「去る」という意味になるのかと考えるより、「我」がノコギリの形だが音が合ったので「われ」の意味に使ったというのと同じように、仮借だと考える方が繫がりやすいのではと思ったりする。