鶺鴒鳴


「鳴」もなかなか難しい漢字である。鳥部にあるが、「口」が聲符でないことは自明なので会意字。説文には「鳥聲也。从鳥从口。武兵切」とあって鳥と口で鳥の声を表す。漢和辞典も概ねこのまま、あるいは鶏の声とする。ところが、『字通』では、これも「クチ」ではなく「サイ」だとして、鳥占の姿だと説く。これは少々無理があるのではないかと思わざるを得ない。この説では「唯」との関係もはっきりとは見えてこない。白川説をもう少し確かめようと『説文新義』にあたると、4-95に「雞鳴を示す語であろう」と説文通りの解釈にとどまっている。また、2-44「口」のところで、「載書の器である〓と同形であるが、載書のときには字形やや横長、かつ扁に用いることは殆んどない」と記している。「鳴」は甲骨文字もある古い字なので、『甲骨文字小字典』(落合淳思)で調べると、卜文の「之日夕有鳴鳥」が引かれていて、説文で問題ないようだ。白川説については「殷代に鳥占いが行われた証拠はない」と斬り捨てている。


追記:「鳴」(弘道軒)の鳥の形を見ていて、高島屋を思い出して検索してみた。
http://ameblo.jp/zeirishi-west/day-20100303.html
高島屋の「高」を云々することは多いが、「島」を云々することは不思議と少ない。どちらも伝統的楷書にすぎないのに。