蟄蟲坏戸



「蟄」は蟲(必ずしも昆虫ではない)が土中に冬ごもりすること、転じて人が家にこもること。「蟄居(ちっきょ)」は「蟄居閉門」、罰としての「押し込め」という意味合いがある。自ら閉じこもる場合は「ひっきょ」と読む(嘘)。

「蟄(zhé)」の聲符は「執(zhí)」だが、日本での音は「チツ・シツ」と異なる。「シツ」で揃っていれば「ヒツ」までは後一歩、江戸っ子なら間違いなく同じになる(まだヒッキョに拘っている)。それに「ち・し」は濁れば「ぢ・じ」で、区別はなくなる。

そういえば、「失(shī)」を聲符としながら「秩(zhì)」と中国音も変わるし、「至(zhì)」も冠がつけば「室(shì)」となる。日本での音もやはり異なる。ところが同じ冠がついても「窒(zhì)」はもとの「至(zhì)」と変わらない。

まあ、おそらく昔は同じように発音していたものが時代とともに変化してしまったということなのだろう。漢字は一字一音で、こういう変化を辿るのに便利だと思っていると、その形声文字の出来た時代を読み違えて大間違いをやらかす可能性もあるので怖い。

形声字だから音だけのつながりという訳でもなく、「密室」と「窒息」を並べてみるとどこかで意味もつながっている感はある。

ついでのことに、肉月もつけて、「膣(zhì)」と「腟(chì)」。いや、こちらは府川充男師匠のネタだった。