しかられて2

JIS X 0208:1997の「附属書7 区点位置詳説」によると、28区24点「叱」には3つの字形がある。
aは78年版の1刷の形、bは同じく2刷から4刷および7刷以降の形、cは4刷の正誤表と5刷の形。83年版、90年版はすべてbの形である。
aは正楷書、bは弘道軒清朝、cは文部省活字の字形に同じ。
これらはJIS X 0208では包摂されている。しかしJIS X 0213:2004では表外漢字字体表への対応のため、cの字形を別字体として分離し、第3水準に追加した。
なぜなら2001年にUCSにExtensionBが追加され、その中にcの字体の文字が存在したためだ。
明朝体活字字形一覧』で見ると、道光版康熙字典にある2つの字形から諸橋大漢和の(3248=aと3247=c)2つの字形の間にある23の資料の中で、両方の字形を備えているのは2つしかない。1914年の博文館四号と1916年の宝文堂二号(宝文堂は金沢市にあった印刷所で、小宮山氏によるとこの見本帳の内容はほとんど築地活版の二号明朝と同一であるという。しかし、「叱」に関するかぎり築地二号とは字形が異なる)で、博文館はaとc、宝文堂はbとcを載せている。築地活版では二号と三号がbの字形で、五号がcの字形になっている。
『五車韻府』(1820)の活字はbの字形で、「Chih」の音がついている。ただし付属の辨似表(木版)にはbとcが並んでいる。

(部分を合成)

JIS X 0221:2001の53F1では5欄すべてがbの字形となっている。もし、JIS X 0208が第1次規格の5刷以降、cの字形を保っていれば、cの字形がBMPに入っていたはずなのだが。

昭和32年発行の岩波文庫『日本童謡集』(印刷は精興社)に「叱られて」(作詞:清水かつら)が載っている。本文はcの字形、楽譜のタイトルはbの字形。