黄表紙の変体仮名

国立国会図書館の60周年記念特集ページ
http://www.ndl.go.jp/exhibit60/copy2/3gesakusha_2.html
に、山東京伝『作者胎内十月図』鶴屋喜右衛門版 享和4(1804)序刊の自筆稿本と刊本を見比べられるという素敵なページを発見。って2年も前の公開か。知らなかった。
刊本は河出書房新社から出たものがある(絶版)が、稿本が残っていたわけだ。
稿本の一丁目が欠けているので、二丁目の裏の一部を切り出して比較してみた。



「稿本」
かくて七日まんず〈春〉る日/とろ〳〵とねふりしゆ〈由〉めに/いんぐわ〈王〉ぢぞうあら〈良〉は〈八〉れた〈多〉ま〈?〉ひ/ぜんざい〳〵わ〈王〉れは〈八〉これといふに/およば〈八〉ず〈春〉す〈春〉が〈可〉た〈多〉でそれと/さとるべしそも〳〵ぐわ〈王〉ん/まうおほ〈本〉きな〈奈〉か〈可〉にさくの/た〈多〉ね〈年〉をさづけてしゆか〈多〉うを/は〈者〉ら〈良〉ませてくれろといふ/ぐわ〈王〉んは〈八〉としひさしく/ほ〈本〉とけをしやうば〈者〉いに〈尓〉してゐる/おれも これが〈可〉/は〈者〉じめてだ〈多〉さす〈春〉が〈可〉の/おれも此ぐわ〈王〉んに〈尓〉は〈八〉/とんとこま〈?〉りは〈者〉てた〈多〉さくしやとうまれた〈多〉/いんぐわ〈王〉よりこんなぐわ〈王〉んをかけられた〈多〉おれが〈可〉/いんぐわ〈王〉だ〈多〉し〈志〉か〈可〉しまんざらことは〈八〉りをいつた〈多〉ら/とんだ〈多〉ひきやうぼ〈本〉さつな〈奈〉どゝやす〈春〉くし〈志〉をるで/あらふそれも又ざんねんだ〈多〉か〈可〉ら〈良〉だ〈多〉いじの此/玉をさづけ〈介〉る ほ〈本〉どにこれをのめ

「刊本」
かくて七日まんず〈春〉る日とろ〳〵と/ねぶりしゆめに〈丹〉いんぐわ〈王〉ぢぞう/あら〈良〉は〈八〉れ〈連〉た〈多〉まひぜんざい〳〵わ〈王〉れ/は〈八〉これいふに〈尓〉およば〈八〉ず〈春〉すが〈可〉た〈多〉で〈天〉/それ〈連〉とさとるべしそも〈毛〉〳〵/ぐわ〈王〉んまうおほ〈本〉きな〈奈〉か〈可〉に〈尓〉さくの/た〈多〉ね〈年〉を〈越〉さづけて〈天〉くれ〈連〉ろといふ/ぐわ〈王〉んは〈八〉としひさしくほ〈本〉とけを〈越〉/し〈志〉やうば〈者〉いに〈尓〉してゐるおれ〈連〉も〈毛〉/これが〈可〉は〈者〉じめてだ〈多〉さす〈春〉が〈可〉のおれ〈連〉/も此ぐわ〈王〉んに〈丹〉は〈八〉とんとこまりは〈者〉て/た〈多〉さくしやとうまれた〈多〉いんぐわ〈王〉より/こんなぐわ〈王〉んをか〈可〉けら〈良〉れ〈連〉るおれ〈連〉が〈可〉いん/ぐわ〈王〉だ〈多〉し〈志〉か〈可〉しまんざらことは〈八〉りをいつ/た〈多〉らとんだ〈多〉ひきやうぼ〈本〉さつ〈川〉な〈奈〉どゝ/やす〈春〉くし〈志〉をるであらふそれ〈連〉も又/ざんねんだ〈多〉か〈可〉ら〈良〉だいじの此たまを〈越〉/さづ〈川〉け〈介〉るほ〈本〉どに〈尓〉これ〈連〉をのめ


引き合わせてみると、刊本が一行抜けているが、著者校で削除したのか筆耕の飛ばしたのがそのままになったものか分からない。
変体仮名の使用状況を見ると稿本とずいぶん違うことが分かる。稿本では「れ」はほとんど「礼」なのに対し刊本ではほとんど「連」である。刊本は「を」に「越」が交ざるが稿本は「遠」ばかりのようだ。
稿本の「ま」で、「末」ではなさそうな字があるが、「満」でもないように見え、よく分からない。