閉塞成冬


「成」の康熙字典体は「成」(U+2F8B2)、微妙な違いだが、一画多い。「丁」が二画に数えられるからだが、楷書でも普通は鉤の手に折れて一画で書く。
開成石経では分けて書いているようだが、そんな面倒なことは普通しない。
異体字としては「丁」の代わりに「午」が入った「𢦩」(U+229A9)というのもある。

朔風拂葉


「拂」は当用漢字表ではこの形だが、当用漢字字体表で「払」の形となった。
すでに大正8年の漢字整理案でも「許容体案」に出てきてはいる「払」だが、一般に用いられた様子は見えない。もっとも手書きでは使われたかもしれない。

弘道軒清朝四号に「払」があるのは、おそらく当用漢字字体表以降に作られたものだろう。

ちなみに、康熙字典には補遺に「払」が存在するが、「拂」の略字ではなく、別字扱い。

虹藏不見


弘道軒清朝四号の中に、「藏」と「蔵」の両方があるのが解せない。「藏」も決して康熙字典体ではない。見比べればこの二つの字体を同じ人間が書き分けたのではないことは瞭然だろう。「蔵」は明らかに昭和二十年代以降に書かれたものである。

金盞香



「香」という字を漢和辞典で見つけようとすると、かなり大変な思いをする。部首は禾でも日でも曰でもない。驚いたことに「香」という部首がある。部首字なら象形なのかというと、そういうわけでもない。

小篆は右のようになっていて、

「黍+甘」なのだという。つまり正字は「𪏽」(U+2A3FD)。

白川説だと「黍+曰」なのだが、ともかく今の字形は省略されたものらしい。甲骨・金文を参照できないので、ふーんと言って諦める。
別に面倒な字ではないのに『宋元以来俗字譜』ではさらに省略された字体が載っている。

草書なのだろうが、ここまでくるとUnicodeにも入らないだろうなぁ。

地始凍



「凍」の異体字といっても簡体字の「冻」くらいしかないかなと思ったら、大熊さんが面白いことを書いていた。
http://tonan.seesaa.net/article/232965513.html

「涷」(U+6DB7)は川の名前、また俄雨、豪雨の意味で、「こおる」とは関係ないが、古来混同されてきたもののようだ。

山茶始開


「茶」の字は説文になく、字源はよくわからない。
字書では「荼」から分かれたものだという。また「𣗪」(U+235EA)とか「𣘻」(U+2363B)という異体字もある。

ふと、思い出したのが大熊さんのブログ。「保」は「ホ」でないといけない、康熙字典以来間違っているという話。

http://tonan.seesaa.net/article/191834531.html

字源は異なるようだが、「茶」のほうはずっと「ホ」が保存されている。そういえば、HNGで見ると、「荼」「余」ともに縦画が突き抜けて「未」のように書かれた例が多い。

今日は立冬。椿か山茶花が咲いていないかと思ったが、昨日までの暑さではまだまだ。